分野の紹介
専門職養成コース「がん看護分野 CNS養成」
統括責任者:原 頼子(医学部看護学科 教授)
1.本コース設立までの経過
がんは、わが国の死亡要因第1位であり、社会の高齢化に伴い今後さらに増加することが考えられます。そのため国は、「がん対策基本法」(平成19年4月)や「がん対策基本推進計画」(同年6月)を制定・施行し、がん治療に対応する専門医及び専門看護師・専門薬剤師等のコメディカルの養成を推進しています。
本学大学院医学研究科修士課程では、「医学以外の学問的背景をもち、医学・医療に貢献することを目指す人材を対象に、各専攻分野の研究能力及び高度の専門性が求められる職業を担うための卓越した能力、教養、人間性を備えた人材を育成すること」を目的とし、研究者や高度専門職業人を養成しています。特に本学は21世紀COEプログラム「先端的ながん研究拠点」の採択や知的クラスター創成事業「ペプチドがんワクチンの研究」など最先端のがん治療・研究を推進してきています。専門看護師などのコメディカル養成では、平成15年度から修士課程臨床看護学群「がん看護論」、平成19年度から「特別科目がん看護」を設置し、日本看護協会が行うがん看護専門看護師認定試験の受験資格取得に必要な履修科目を設けていました。しかしながら、専門看護師認定審査を受けるためには「特別科目がん看護」教育課程が、日本看護系大学協議会より認定されていることが必須要件であるため、修了者は受験資格を取得できない状況にありました。そのため、日本看護系大学協議会の設置基準を満たすようにカリキュラムを見直し、平成21年1月、がん看護専門看護師教育課程として認可を得ることができました。この背景には、平成19年度に大学改革推進等補助金(大学改革推進事業)として文部科学省が創設した「がんプロフェッショナル養成プラン」事業があげられます。この事業の目的は「がん治療の担い手となる高度な知識・技術を持つがん専門医及びがん医療に携わるコメディカルなどがんに特化した医療人材の養成を行うために大学病院と有機的かつ円滑な連携の下に行われる大学院のプログラムの支援(全国で約14拠点程度)」で、本学をはじめ九州地区医系・看護系13大学の大学院が共同申請し、平成19年8月に採択(5年間)されました。この中でがん看護専門看護師の育成は、「がんプロフェッショナル養成プラン」の重要な柱とされています。
本学における「がん看護専門看護師教育課程」の見直しは、この事業を活用することで拍車がかかり、がん看護専門看護師への道を開くことができるようになり、現在までに16名のがん看護専門看護師を輩出しています。また、この事業は平成24年度からは「九州がんプロフェショナル養成基盤推進プラン」に引き継がれており、カリキュラムの内容は、2017年から日本看護系大学協議会「高度実践看護師教育課程(専門看護師38単位)」の教育課程に認定されています。
2.「がん看護専門看護師教育課程」の概要
本コースでは地域(在宅を含む)および施設におけるがんの予防から終末期の緩和ケアまでの過程において、患者とその家族のニーズに応えられる専門的な知識、実践力を身につけ、さらに、がん医療の現場においてがん看護のスペシャリストとしてその役割を果たせる人材の育成をめざしています。そこで、上級看護実践看護師教育審査基準に照らし、必要な科目を設けています。
3.カリキュラムの特徴
(1)医学系大学院の豊富な資源に立脚したコースワーク
久留米大学大学院医学研究科修士課程(本課程と略)医科学専攻は、基礎医学・社会医学・分子生命科学・バイオ統計学といった学群とともに臨床看護学群が開設されており、このなかで高度専門職業人育成のためのコースワークとして「がん看護論「がん看護専門看護師教育課程(以下、本教育課程と略)」が設置されています。本教育課程では共通科目として卓越した看護実践の基盤となる諸理論や看護職として理解し身につけておくべき倫理、看護行政や諸政策の概要、実践的なコンサルテーションの知識などを教授する科目が設置されています。また、医学系大学院であるポテンシャルを十分に活かし、がん看護に必要な医学的知識や理論、がん患者・家族への看護援助など臨床実践や研究の遂行に欠かせない知識を教授します。さらに本学の特色である「先端がん治療研究センター」や、大学病院に設置している集学治療センター並びに緩和ケアセンターなどで実施されているがん化学療法・手術療法・放射線療法・代替療法・緩和医療等を受ける患者に対する高度な看護実践能力を修得できるように医学部医学科の教員と連携をとりつつ教育プログラムを展開しています。また、本課程には多職種の専門家を目指す学生も多く、本教育課程を専攻した学生は、さまざまな背景をもった学生と相互交流し、共有しながら学びを進めることができる環境にあります。
このような教育環境は、学生の皆さんが広い視野と豊かな人間性を培い、将来、医療現場において卓越した看護実践能力を発揮できる専門看護師への道を約束するものと考えます。
(2)実習環境の充実―大学病院とのユニフィケーション(Unification)
学生がサブスペシャリティを選定し、理論と実践の統合を図るためには、実習環境の整備は大切な要素です。本学大学病院は最先端のがん医療を提供する拠点病院として、がん看護教育においても地域の教育拠点としての実績を持っており、学生の多様な希望に対応できる豊かな実習現場を有し、教育、研究と臨床とのユニフィケーション(Unification)に基づく教育環境が整備されています。また、新たに平成20年6月から日本看護協会の認定看護師教育課程として九州初の「がん化学療法看護」「緩和ケア」の2分野、平成21年11月から「がん放射線療法看護」分野の教育を行う「がん看護認定看護師教育センター」が新設され、質の高いがん看護を実践するための教育環境の充実にむけた全学を挙げた取り組みが進められています。
本教育課程においても専門科目については「緩和ケア特論Ⅰ・Ⅱ」、「がん化学療法看護特論Ⅰ・Ⅱ」を開設し、また、がん看護学実習は、緩和ケアセンターと集学治療センターを有する本学大学病院で行うことにより、理論と実践を統合させることに力点を置いています。
メンバー
原 頼子 久留米大学医学部看護学科 成人看護学教授
桐明あゆみ 久留米大学医学部看護学科 成人看護学准教授
河原田康貴 久留米大学医学部看護学科 成人看護学講師
姫野深雪 久留米大学医学部看護学科 成人看護学講師
研究室紹介
1. 実践力向上のために研究室で進めている内容
1)地域との連携力をつけるための取り組み
内容
- 地域で実施する緩和ケアの最新知識を理解する。
- 地域で暮らす患者・家族のグッドプラクティスに向けて、教育と医療の専門家からアプローチ法を学び、
より良い多職種連携を考える。 - 医療職が自ら学びあい、リーダーとして地域で実施する緩和ケアを支えるための方向性を追求する。
2)実践力の向上
がんプロによるハイブリッド多機能シミュレーションモデルによる演習
「患者さんに寄り添う看護!
がん看護における患者中心の支援とは」
久留米大学医学部看護学科 原 頼子
久留米ネットワークの会
久留米大学大学院医学研究科修士課程看護学専攻がん看護分野CNS養成コースでは、2020年度までに21名が本課程を修了し、地域や臨床現場での実践活動を行っています。それぞれ、がん看護CNSプレCNSあるいは管理者として「実践・相談・教育・倫理調整・調整・研究」の役割を担っていますが、患者の療養環境は著しく変化しており、求められる役割も拡大してきています。そこで、修了生と在学生による久留米ネットワークの会を結成し、卓越した調整力や相談対応能力の向上に向けて事例をとおして学びあい、がん看護の質向上に寄与できるように努めています。
久留米大学大学院医学研究科在学生インタビュー
大学院医学研究科修士課程 看護学専攻 専門職養成コース がん看護分野 CNS養成
髙津 康弘さん
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修士論文テーマ
※近日公開です